ChM-I前駆体cDNAをpcDL-SRα296に組み込んでCOS細胞に発現させた。その結果、培養上清に生物活性を有する成熟型ChM-Iが分泌されることをwestern blot法により確認できた。培養上清から精製したリコンビナントChM-Iのアミノ酸配列を決定したところ、ChM-I前駆体上にある天然型と同一のプロセシングシグナル位置で切断されることが判明した。また、糖鎖付加位置およびSDS-PAGE上の分子サイズも天然型と同一であると推定された。さらに、ウシChM-I前駆体cDNAを発現するCHO細胞株の樹立に成功した。しかし、発現した組換えChM-Iの大部分は血清アルブミンと強く結合して培地に回収される。そこで、アルブミンとの結合を回避するための細胞培養条件の検討を行なった。しかし、アルブミンとの会合を避けるために血清濃度を低下させるとChM-Iの発現レベルは、低下した。次に、アルブミン結合型ChM-Iを出発材料に精製方法を検討した。ブルーセファロースカラムにアルブミン/ChM-I複合体は、ほぼ定量的に吸着するものの、1Mグアニジン塩酸のような強い解離条件のもとにおいてもChM-Iの回収率は約5%と低かった。そこで、現在、ChM-I前駆体cDNAの3′側ドメインを他の可溶性蛋白との融合蛋白として発現・回収する方法を検討している。一方、ChM-I前駆体cDNAをバキュロウイルスを用いた発現系でも検討した。しかし、前駆体蛋白質の適切なプロセシングがおこらないために、生物活性を期待できない不溶性蛋白質として回収された。また、適切な糖鎖修飾も起こっていなかった。
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