研究概要 |
本研究は,各応用機器で要求される磁界の分布,通電状態に応じて交流損失を極小化するのみにならず,磁気的不安定性を抑制しつつ導体の動きに対する安定性を向上させる最適な素線断面を設計する方法を系統化することを目的としている. 3年計画の初年度である本年度の研究実績の概要を以下に述べる. (1)ピーク磁界2.5T/50Hzの交流マグネットの設計,製作をした.現在,性能評価を行っている. (2)交流磁界下で通電損失を計る装置の構成と,そのチューニングを行い,交流超伝導素線およびケーブルの通電損失の測定を開始した. (3)その結果,超伝導線の交流通電電流と外部印加交流磁界の位相のずれが,線の交流損失に大きな影響を与えることが分かった.特に,線の軸方向の磁界が交流損失の特性に影響し,従来,あまり関心が払われていなかった電流の位相と外部磁界の位相の向きが重大な影響を持つことが明らかになった. (4)上記位相差の影響を評価する解析モデルを作り,解析結果と実験結果を比較した.その結果,解析モデルは現象を定性的に良く説明するとはいえ,まだ定量性に関しては改良の余地があることが明かとなった. (5)通電電流と外部磁界の位相差が線の通電安定性に大きな影響を与えることが明らかにされた.この原因は,位相差の通電損失に対する影響と同じモデルで説明できることが分かった.これに関しても,解析モデルの定量性に関しまだ改良の余地がある. 以上,本年度は,従来知られていなかった,また,交流超伝導線の設計に大きな影響を及ぼすと考えられる新しい現象を見い出すなど大きな成果があった.
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