研究概要 |
本年度の当初の予定では,2.5T交流超伝導コイルを用いて交流超伝導線の性能評価を行うことになっていたが,異常に大きい交流損失を発生し設計電流値よりかなり低い電流でクエンチし,予定通りの磁界が得られなかった.現在,対策を考え,再度コイルを作り直している最中であるこのため,本年度の実験は、手持ちの発生磁界の低い交流超伝導コイルを用いて実験をせざるを得なかった. 本年度は上記の状況にもかかわらず,下記のような重要な成果をあげることができた. 1.Nb_3Sn交流超伝導線を入手し,その損失特性,クエンチ特性を調べた.その結果,直流クエンチ電流と交流クエンチ電流とがほぼ一致し,NbTi交流線に見られるような交流クエンチ電流が劣化する現象が見られなかった.これは,入手したNb_3Sn線では,超伝導フィラメントの存在する層の厚さが,磁気的不安定性を起こす限界値より小さいためであると考えられ,我々が既に提案している交流劣化現象の防止対策の妥当性が検証された.また,Nb_3SnとNbTiの交流超伝導線の交流特性を比較することにより、Nb_3Sn線の交流損失が大きい理由が,超伝導フィラメント同志の局所的なショートであることが示された. 2.交流超伝導素線の断面内の磁束分布,電流分布を解析的に求め,これらの分布の時間変動に伴う損失を計算し、線の熱平衡方程式と連成させクエンチする様子をシミュレーションする計算機コードを作り,クエンチ電流を求めた.この解析結果は実験結果にかなり良く合うことが分かり,我々の解析モデルの妥当性が示された.これにより,交流超伝導線の使用用途に応じた最適設計を行うための解析的基礎が与えられた. 以上の成果に基づき,交流超伝導線の用途別設計法の基礎が得られたので,来年度は交流超伝導コイルを完成させて,本研究の成果目標を達成することを目指す.
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