研究概要 |
本研究は,収束イオンビーム(FIB)と電子ビーム(EB)を同時に用いた新しい表面・局所分析法の開発を目標として行った.一つは,FIBによる試料断面加工とEBを用いた断面のオージェ分析を繰り返す"微小領域三次元オージェ定量分析法"である.もう一つは,EB照射によってスパッタ中性粒子をイオン化する"微小領域高感度定量FIB SIMS分析法"である.これらの実現を目指し,イオン・電子デュアル収束ビーム装置の開発を行った. 1.微小領域三次元オージェ定量分析法:研究代表者らは,FIBを極低速走査する試料加工方法(shave-off法)を開発していたが,本研究では理論的な検討から,shave-off法が三次元分析の試料加工方法として最適であることを示した.装置試作では,FIB・EB走査制御機器を独自に製作し,コンピューターと組み合わせることにより,FIBのshave-off走査とEB面走査の繰り返し制御が可能となった.この加工方法を球形粒子に適用した結果,形状に依らず,段階的に断面を削り出すことができた.したがって,本手法および試作装置により,最大の課題であった試料加工方法が確立され,数μm以下の任意形状粒子の三次元分析が実現できることが示された. 2.FIB励起オージェ電子分光法:イオン励起オージェ電子放出(IAE)の分析手法への応用に向けて,基礎検討を行った.sub-μm以下に細束化したFIBを励起源とすることにより,初めてIAEを用いた元素マッピングに成功し,FIBの微小領域分析における新たな展開を示すことができた.基礎科学的に見れば,IAEは二次イオン放出過程の一部であり,両者の同時測定によって,SIMSの定量性向上の鍵を握る二次イオン放出過程解明に有用な情報をもたらすものと期待される.
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