当研究は、「研究目的」に詳述したように、ある論理学著作の本文校訂を目的とし、今年度はそれを若干おしすすめてきた。本文校訂という作業の性質上、特記するほどの「新たな知見」というほどのものはない。強いていえば、Ars Meliduna第四部に紹介されているenuntiabiliaをめぐる諸説について、どの説がどの学派の主張になるかを、多数の同時代の著作を調べることによって、同定したことがあげられる。この成果は、1994年春にSan Marinoで開催された、第11回中世論理学・意味論ヨーロッパシンポジウム、および国内では、同年夏のArtes Liberales(東北大学清水哲朗助教授主催の科学研究費Aによる研究会)で発表した。また、前記シンポジウムのActsで発表される予定である。 そのほか、本年中に当研究にかかわって行った作業としては、校訂本文中にしばしば言及される古典作家等の引用箇所の同定するための道具を整えたことが舉げられうる。 (1)キリスト教作家についてのDataBaseであるCLCLT(Cetedoc Library of Christian Latin Texts on CD-Rom)を予定通り入手。 (2)ラテン約聖書および古典作家についての既存のDatabaseを調査(Oxford Text Archives等)。 (3)そのほかの重要著作(Aristoteles Latinus等)について、スキャナーによるDatabaseを順次作成中。
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