当研究は、「研究目的」に詳述したように、Ars Melidunaと呼ばれる12世紀の論理学書の本文校訂を目的とし、今年度はそれを若干おしすすめてきた。本文校訂という作業の性質上、特記するほどの「新たな知見」というほどのものはない 強いて言えば、哲学の分類および論理学の哲学における位置について9世紀から12世紀までに現れた諸説を概観した事が擧げられる。その結果、この問題について各時代ごとに特徴的な説が唱えられており、関係各著作の年代決定の有効な指標たりうることが明らかになった。この成果は、1995年9月のArtes Liberales(東北大学清水哲朗助教授主催の科学研究費Aによる研究会)、および1996年一月のコペンハーゲン大学で開催された国際学会“The Copenhagen School of Medieal Philosophy"で発表した。 さらに、12世紀論理学にかかわる写本すべてをリスト・アップし、(その課程でこれまで研究者の間で知られていなかった写本も若干発見した)、その予備的研究をおこなうことによって、Ars Melidunaをその歴史的背景のもとに明らかにする準備を整えた。 そのほか、本年中に当研究にかかわって行った作業としては、校訂本文中にしばしば言及される古典作家等の引用箇所を同定するための道具を前年度に引き続き整えたことが擧げられうる。今年度は、ボエチウスの全著作のデータ・ベース化を完了するとともに、プリスキアヌスを入力中である。
|