この研究は、日本の在家仏教運動を担ってきた在家教団の既成教団との関連で4つのタイプ(借傘型、内棲型、提携型、自立型)に分け、それらに帰属する幾つかの教団の宗教運動の比較研究を通して、日本の在家仏教運動が既成教団との間に持ってきた複雑な関係の特質を把握する目的で行われた。両年度にわたった研究成果の概要は、以下のように要約できると思われる。 (1)これまで新宗教の一部(仏教系新宗教)として研究されてきた日本の在家仏教運動が、総じて、既成教団と密接に関連し、その強い影響のもとに運動を展開してきただけでなく、今日でもなお多様な関係を持ち続けていること。 (2)しかしながら、日本の在家仏教運動には在家中心の宗教実践(民衆主体主義)と現世に生きる人間のための仏教運動(現世主義)という、既成教団には見られない独自性があること。 (3)第3に、4つのタイプの間での既成教団からの伝統継承度の違いは、内棲型と自立型の場合には比較的高いと言えても、借傘型と提携型が必ずしも低いとは言えず、また、個々の運動によっても違いがあって、一概には語れないこと。 (4)第4に、少なからぬ在家教団(本門佛立宗、念法真教、辯天宗、阿念宗など)に、既成教団とは性格の異なる僧侶がいて、教化活動や儀礼執行にあたっていること。 (5)第5に、在家教団の末端家庭集会をみると、成立の新しい教団(立正佼成会や創価学会など)のほうが古い教団(本門佛立宗など)よりも、より強い在家信者中心主義(民衆主体主義)が貫かれていること。
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