本研究の計画1年次である今年度(平成6年度)は、フランス近代公教育の組織編制問題を国・地方の権限関係及び事務配分問題の視角からどう把握するのかを、その基本的骨格をつくることを課題とした。そのための基本的な歴史認識と構造的な枠組みを作り上げる作業を進めるために、資(史)料や文献の収集と整理をできるだけ広範に行った。 研究内容に関わって具体的に行った作業をいくつかあげれば、まず第1に、フランス現代の地方分権法の動向と関連して、公教育組織化の問題とフランス地方自治制度(法)はどのような関連にあるのかを、歴史構造的に整理することをポイントにした。 第2に、理論的仮説は、両者の関係を枠づけた法制上の基本構造は1880年代に確立し、その後若干の修正はあるものの、その基本的構造は1980年代分権化法成立前までの間まで約100年続いたというものである。それを実証するべく作業を進めた。 第3に、フランス公教育の組織化問題に関しては、従来から私は1880年代の義務教育の組織編制のあり方をめぐる基本原理が、「コミューンによる初等教育役務」から「国家による初等教育役務」へと根本的に転換する事実に着目してきた。本研究では、その事実と並行する形で、コミューン(市町村)組織に関する基本的な法制的枠組みが1884年法でつくられたことを着目し、両者の関連を解明することで研究課題により実証的に迫った。 なお、3年間にわたるこの研究計画を達成するために、関係文献・資料の収集および整理に着手した。
|