今年度の前半は、本研究の最終年度にあたるため、平成6年度に収集した文献の整理と検討を行うとともに、さらに文献の収集を行い、同時に、本研究をまとめるための枠組みについても検討した。その際に、日米相互の評価にみられる論点の推移にとくに注目した。また、後半には、主として日本におけるアメリカ教育研究の最近の動向を把握するための基礎資料として、文献目録を作成するとともに、研究のまとめに着手し、研究成果報告書を作成した。 日本におけるアメリカ教育研究の特徴は、文献件数が多く、しかもほとんどが個別的・具体的なテーマに関するものであり、アメリカ教育の全体を論じるものが見当たらないという点にある。これは、研究の層の厚く、関心が分化しは反映であるが、同時に、多様性をもつアメリカ教育の総体を評価の視点から概観することのむつかしさをも表わしている。日本の研究者の関心は、高等教育、教員養成(現職教育を含む)、学校管理などのトピックに集中していることは、日本の教育をめぐる課題と無関係ではないものと思われる。自国の教育の弱点ともいえる問題についてとくに相手側の実情を知ろうとする傾向は日米のどちらにも強い。 アメリカにおける日本教育への関心は、1980年代以降急速に高まってきたが、その対象は、達成の高さ、そして効率性の高さ、という問題にほぼ集中してきた。ところが、そういった共通の認識を超えたことろでは、評価は大きく分かれている。それらが高い代償の結果であるとネガティブにみる立場と、より客観的に評価する立場とがみられる。これは、日本の教育から何が学べるのかという、性急な見方とも関連がある。近年、このような見方を離れて、日本の教育を学校での営みだけでなく、より広い視野から包括的にとらえようとする研究が芽生えてきていることは注目すべきことである。
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