本年度の研究経過及び結果の主な内容は次の通りである。 (1)これまでに古生代〜中生代の小型有孔虫類の産出が報告されている地域のうち中国地方の秋吉、帝釈、阿哲、大賀の各石灰岩および徳島県の拝宮石灰岩に関する現地調査、および薄片制作のための試料の採取を行い、この年代の小型有孔虫類はすべて薄片によって研究されていることから、約300枚の薄片を制作した。 (2)薄片を顕微鏡下で観察し、断面において形態解析のための計測を行った。 (3)産出が報告されている地域の地質学的資料が保存あるいは関係文献が保存されている東京大学および北海道大学において資料の収集・整備を行い、小型有孔虫類の属・種に関する情報の収集-整理を行った。 (4)わが国の古生代〜中生代初期の小型有孔虫類が報告されている文献について、a)記載属・種、b)記載はされていないが図版に示されている属・種、c)記載も図版もなくリストあるいは特徴が記述されている属・種に区別して、産出種の総括表の作成資料を整備した。 (5)産出年代によって属・種ごとにその化石層序学的意義についての資料整備をおこなった。 (6)古生物地理学的研究のために、産出地・共生種・古生物群集としての独立性の解析を進めた。 上記のような研究過程である程度明らかになったことは、石灰紀前期とペルム紀後期に地球的規模の対比が可能なきわめて特徴的な群集があること、西南日本外帯と北海道において三畳紀の小型有孔虫群集が新たに定義される可能性があること、石灰紀からペルム紀にかけて古生物地理区の変化がかなり激しく、プレートテクトニクスおよび海水準変動との関連を明らかにする資料が整備される可能性が見いだされたことなどが揚げられる。
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