二次イオン質量分析法によるウラン-鉛年代測定法の開発

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06640628
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 宮野 敬 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (60133039)
• 研究分担者: 角替 敏昭 島根大学, 教育学部, 講師 (50252888)
• キーワード: 二次イオン質量分析計 / SIMS / U-Pb年代 / ジルコン / ジンバブエ / 変成帯 / 始生代

研究概要

本研究の目的は、二次イオン質量分析法(SIMS)により、ジルコンを用いたU-Pb年代測定法を開発することである。分析には筑波大学のSIMS(カメカIMS-3F)を使用したが、このSIMSによるウラン、鉛の測定例は今まで報告されていない。したがって初年度である平成6年度は、主に分析法の開発を重点的に行った。本研究によって得られた結果を以下に示す。
1.分析初期条件の設定:ウランと鉛同位体のピークを他の妨害ピークから抽出するため、SIMSによる分析初期条件(電流値、質量フィルター値、エネルギースリットの幅等の決定)の設定を行った。その結果、ジルコン分析時に6000以上の高い分解能を得ることに成功した。なお、鉛分析時の感度は、約1カウント/ppmであった。この値はSHRIMPの約10分の1であるが、先カンブリア時代の岩石にみられる鉛含有量の多いジルコンには有効である。
2.標準試料の分析結果:ANUのウィリアムズ博士から同位体比の測定されているスリランカ産ジルコン(SL13)の提供を受け、ウラン、鉛の測定を行った。その結果、検量線法を用いてウラン、鉛の定量分析が可能であることが明らかになった。またSL13の鉛-鉛年代を決定したところ、5.62±0.63億年(1σ)であり、同位体希釈法の結果(5.74億年)と調和的であった。
3.分析法の検証:上記の検量線を用いて未知試料の分析を行った。使用したサンプルは始生代の変成帯である、南アフリカ・リンポポ帯中央部の片麻岩(サンドリバー片麻岩)で、この岩石の年代はSHRIMPによって32〜32.9億年と報告されている。分析の結果得られたU-Pb年代は、約32.5億年であり、SHRIMP年代と調和的であった。分析法の検証は未だ不十分であり、平成7年度も引続き行う必要がある。

研究成果

• [文献書誌] 角替敏昭: "SIMSによる太古代岩石のU-Pb年代" 月刊地球号外. 1. 62-66 (1994)
• [文献書誌] Tsunogae,T.: "U.S.Geological Survey Circular 1107" U.S.Geological Survey Circular. 1107. -329 (1994)
• [文献書誌] Tsunogae,T.: "Compositional variation of Archean pelitic nocks" Memoirs Fac.Educ.Shimane Univ.28. 25-33 (1994)
• [文献書誌] Miyano,T.: "Phase equilibria in a binary H_2O-CO_2 fluid mixture at Ps>Pf and charnockitization in the fracture system" Sci.Rept.Inst.Geosci,Univ.Tsukuba(Soction B). 16. 1-28 (1995)
• [文献書誌] Hisada,K.: "Petrographic feature of metamorphic nocks from Topisi in the western margin of the Limpopo belt" Ann.Rept.,Univ.of Tsukuba. 20. 51-57 (1994)
• [文献書誌] Tojo,S.: "H_2O-vich fluid inclusions in qnartz from charnockite near the Manjirenji-dam in the Limpopo Northem M.Zone" Ann.Rept,Univ.of Tsukuba. 20. 77-81 (1994)