富山において24時間間隔で降水を採取し、その化学成分・硫黄同位体比を測定した。塩化物イオン濃度は5〜8月の期間では、ほぼ2ppm以下であったが、9月以降は最高20ppm程度までに増加した。この事から、塩化物イオンはすべて海塩起源に見えたが、そのナトリウム/塩化物イオン比が夏季には海水の半分程度であることから、富山では従来報告がなかった非海塩性塩化物イオンの存在が認められた。硫酸イオンの濃度は、5〜8月は4ppm以下であるのに対し、9月以降は上昇して6ppm程度までとなった。海塩の分を差し引いた非海塩性硫酸イオンの濃度は、5〜8月は2.5ppm以下であるのに対し、9月以降は5ppmまで増加とした。一方、降水中の硝酸/非海塩性硫酸イオン比は、5・6月は0.7〜1.2であったが、次第に低下して12月には0.2〜0.6程度であった。非海塩性硫酸イオンの濃度が、5〜8月と9月〜12月の期間では階段状に異なることとは対照的であった。降水中の硫酸イオンの硫黄同位体比を測定し、それと海水寄与率から、比海塩性硫酸イオンの同位体比を求めた。その結果、非海塩性硫酸イオンの同位体比は、5〜7月上旬の夏季でも-1〜3‰とプラスの値が認められた。従来の研究では、夏季には大陸からの硫酸イオンの長距離輸送はないとされていたが、硫黄同位体比のプラスの値は、夏季にも大陸から硫酸イオンが輸送されていることを示唆する。8月下旬から10月の期間には、硫黄同位体比は0〜3‰となって、マイナスの同位体比は認められなかった。この事から、この期間は5月〜7月に比べて、大陸からの硫酸イオンの寄与が一層強まっていることが判明した。このように、観測間隔を高密度にした観測を実施することにより、夏季における大陸から硫酸イオンの輸送を検出するなど新しい知見を得た。
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