研究概要 |
この研究は、本研究者を研究代表者とする「土壌動物の一群 カマアシムシ類の基礎情報の整備、課題番号03640550、平成三〜五年」をうけつぐものである。本年度は、まずいままでの研究で新種とみとめられたもの記載をおこなった。発表論文の第一のものが与那国島で発見されたカマアシムシ属(Eosentomon)の新種の記載で、E.dounanenseと命名した。この種は中国広東省や海南島省に分布するものに近縁であるが、前足にある感覚毛の形状や 生殖器官の構造に種をわかつにたる差異がある。おなじく発表論文の第二には北海道や本州北部の各地でえられたカマアシムシ属の二種で、それぞれE.konsenense,E.juniと命名した。両種はアラスカや本州北部から報告されている種群にふくまれるが 生殖器官の形状や毛序などに顕著な特性をもっている。 これらの新種のほかに、分類学上の位置をきめかねているものが、日本列島内でみつかっているが、新種と認定するにたる標本をえていないものがある。南西諸島、とくに宮古島、石垣島、西表島および与那国島のものは、島のおおきさと開発のすすみかたからみて、早急なる調査が必要とおもわれるので、これらの島島に平成六年一二月三日から一二日までと、七年二月一日から六日までの両度にわたって、現地調査をおこなったが、六年秋の台風の被害が、これらの地域の森ではいちじるしく、土壌動物相にもおおきな影響があった。いわゆる稀種(たとえば上述の新種、E.dounanense)はまったく採集されなかった。平成七年度にも、さらなる調査をこころみたい。 またいままでの調査結果(日本列島内合計3020地点)の記録の暖かさの指数、寒さの指数などの総点検をするため、その基礎資料がある滋賀県の琵琶湖研究所に八月二七日から三一日まで滞在して、再検定をおこなった(発表論文三、四参照)。
|