本年度の研究予定項目は(1)未硬化積層物のV曲げ成形(2)高温硬化過程におけるV曲げ成形、であったがほぼ終了させるとこができた。以下に概要を記す。 (1)半硬化状態のケブラ-/カーボン-プリプレグとアルミニューム合金薄板を積層した積層物のV型パンチとダイによる常温曲げ成形(これをプリフォームという)をおこない、加工圧力、曲げ半径(ポンチ先端半径)と成形状態(板厚分布、スプリングバック)との関係を調べた。ポンチからの集中力により曲げ部の板厚は減少すると予測されるが、繊維直角方向曲げの場合、先端半径に関係なく板厚の分布は5%以内であり、プロプレグの流動、ウオッシュアウトは非常に少ないことが解かった。これに反して繊維方向の曲げの場合は、先端半径が小さいほど先端付近の板厚が減少することがわかった。スプリングバック量は先端曲げ半径に正比例して増加し、成形圧力にはあまり関係ないとわかった。またオーバーベンドによるスプリングバックの減少は認められなかった。プリプレグは予想以上に成形圧力により流動しやすいことが判明した。 (2)簡易オートクレープを設計製作し、計画どおり真空バッグ法による成形実験を行うことができた。平板状積層物をナイロン66フィルム(融点240度C)製の袋にいれ、中の空気を真空ポンプで抜き、封印する。これを常温でV曲げ成形し、オートクレープ内で、加圧力1-5kgf/cm2、加熱温度120-160度Cで硬化させ、硬化物の板厚分布、スプリングバック、型転写精度を測定した。完成品形状はプリフォーム品の板厚を均一に薄くした形となっており、板厚分布は曲げ方向に依存し、成形圧力には依存性がなかった。また硬化温度にもあまり関係がなかった。スプリングバックはプリフォームのままであり、正確にパンチ形状を転写するのには、なんらかの形状拘束法を取り入れなければならない。
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