研究概要 |
平成6年度は,平板上の層流境界層流れ中にスリットを通して流体を連続的に噴出し,ヘアピン渦を連続的に生成し,界面活性剤水溶液中におけるヘアピン渦の挙動が水流中におけるものとどのように異なるかを明らかにした.しかし,そこでは複数の渦がお互いに相互干渉しているため,渦の運動解析が容易ではないことが痛感された.よって本年度は、渦の運動解析が単純に行えるように,平板上の層流境界層中にスリットを通して短時間流体を注入することにより単一のヘアピン渦を生成できる実験装置を設計・製作し,これを用いて界面活性剤水溶液中での単一ヘアピン渦の挙動が水中に比べてどのように異なるかを調べた.得られた結果は以下の通りである. 1.界面活性剤水溶液中に単一ヘアピン渦を生成する為には,主流速度が同一の場合,スリットから噴出させるジェットを水中の場合に比べて,より大きな噴出速度,より少ない噴出体積とする必要がある.すなわち,より速く,より短時間の噴出が要求される. 2.界面活性剤水溶液中のヘアピン渦は,せん断速度が増加すると(SISによる)溶液の粘度急増のために発達が抑制される. 3.ヘアピン渦の首部の壁面に対する傾き角は,水中に比べて界面活性剤水溶液中において小さい.4.水中の場合には,ヘアピン渦の発達により,2次渦,従属渦,複数の低速ストリーク,乱流スポットなどの発生が観察されるが,界面活性剤水溶液中では下流においてヘアピン渦は減衰消滅する.5.今後の課題としては,粘弾性的性質の特に弱いものから強いものまで,種々の界面活性剤水溶液を作動流体に使用して,粘弾性的性質の変化によるヘアピン渦の挙動の相違をより明確にしてゆくことである.
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