約40箇所からのASR劣化構造物(おもに橋脚)から採取したコンクリートコアに対する2種類の条件下(50℃の飽和NaCl溶液への浸漬および38℃の湿気槽)における促進膨張試験を行うことによって両条件下におけるコアの膨張量を比較検討した結果はつぎのようである。 (1)本調査の対象となったASR劣化構造物には比較的多量の塩化物が存在していた。この塩化物は融氷剤として使用されているNaClに起因すると考えられる。 (2)飽和NaCl溶液に浸漬されたコンクリートコアの膨張量より、構造物の残留膨張量を予測するデンマーク法は、38℃の湿気槽中で保存する促進法よりも短い時間で残留膨張量の予測が可能である。 (3)デンマーク法では、湿気槽法よりも残留膨張性の有無の判定が明確である。 (4)デンマーク法による残留熱膨張性の判定結果と38℃の湿気槽に保存したコアの膨張量による判定結果はよく一致する。 (5)デンマーク法において大きな膨張量を示すコンクリートでは残留膨張を引き起すに十分な未反応シリカ分が含有されているとともに、NaClの浸漬によってコンクリート中の細孔溶液のOH^-イオン濃度が上昇するためにアルカリシリカ反応が促進される可能性が高い。 以上の結果より、デンマーク法は、NaClの影響を受けるコンクリート構造物の残留膨張性を予測するための有効な試験方法であることが明らかとなった。
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