研究成果は、(I)実際のASR劣化コンクリートから採取したコンクリートコアの促進条件下における膨張挙動と(II)飽和NaCl溶液中に浸漬した反応性骨材含有モルタルの膨張と細孔溶液の組成の関係から見た促進膨張試験のもつ意味についての検討に大別される。前者についての成果をまとめると下記のようである。 (1)ASR劣化構造物には比較的多量の塩化物が存在していた。これは融氷剤として利用したNaClに起因する。(2)飽和NaCl溶液に浸漬されたコンクリートコアの膨張量(デンマーク法)より、構造物の残留膨張量を予測する方法は、38℃の湿気槽中の促進法よりも短い期間で残留膨張量の予測が可能である。(3)デンマーク法では、湿気槽法よりも残留膨張性の有無の判定が明確である。(4)デンマーク法による残留膨張性の判定結果と38℃の湿気槽に保存したコアの膨張量による判定結果はよく一致する。 後者についての成果は下記のようにまとめられる。 (1)飽和NaCl溶液中の反応性フリント含有モルタルのOH^-イオン濃度は、38℃の1N NaCl溶液中のものと同様に浸漬後に上昇するが、上昇後の最大値はもとのモルタル中のアルカリ量に比例して大きくなる。 (2)飽和NaCl溶液に浸漬した反応性フリント含有モルタルの膨張は、湿気槽中のものより約2倍以上大きな膨張量を示し、両者における膨張量の間には非常に良好な相関関係が存在する。 (3)飽和NaCl溶液中においては、骨材の反応性および劣化構造物の残留膨張性をより明確に判定することが可能であることが、理論的にも証明された。
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