平成6年度からの研究により、以下の問題点が把握できた。名古屋圏は舞台芸術創造に関して潜在的な創造能力はあるのだが、将来にむけての構想力が弱く、その地域の持つ潜在力を生かしきれていない。近年、名古屋地域でも公的機関が舞台芸術支援に積極的に乗り出してきてはいるが、地域全体の中で自らの活動を位置づけるような視点はまだ乏しい。しかし、それ以上に舞台芸術創造に関わる人々のなかにおける将来の地域の舞台芸術環境に対する想像力が著しく欠如していることが指摘できる。市民自らが自由かつ公正な立場で主体的に地域の舞台芸術創造の環境整備についてのビジョンを形成し、行政はそれを支援するような立場、あるいは施策をとることが望ましいのだが、残念なことに、その市民のレベルにおけるビジョンの構築が遅れているのが問題なのである。今年度は特に、愛知芸術文化センター、名古屋市芸術創造センターを核とした舞台芸術創造関連施設相互の業務上の交流関係、それら施設の人的交流関係、経済的な相互依存関係を図式化し、さらに、民間劇場関連施設の活動も視野に入れた名古屋地域の舞台芸術創造ネットワークの構造の一般化、モデル化を行った。それに基づき、舞台芸術創造の地域支援体制の確立、観客の開発、批評性、公開制の確保、アマチュア活動とプロフェッショナル活動の支援環境の区別、地域の既存インフラの活用と補完施設の整備、民間と公共の連携の強化舞台技術組織と創造集団、劇場・ホールとの創造的結合、地域の既存インフラの活用と補完施設の整備等、地域の舞台芸術活性化のための提案を行った。
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