研究概要 |
本年度は,FFT(Fast Fourier Transformation,高速フーリェ変換)アナライザーを用いて材料中の欠陥などの定量化ならびに弾性率測定への適用の可能性を検討した。すなわち, 1.金属焼結体中における内部欠陥として空隙を取り上げ,その定量化への適用を試みる。 本実験では原料粉末として粒度が種々異なる噴霧および電解Fe粉を用い,さらに燒結条件を変えて空隙量ならびに空隙の形状を変化させたものについて実験と検討を行った。 2.弾性率測定法適用への可能性についても実験と検討を行なう。 ここでは上記1.で得られたFe燒結体ならびに熱処理を施した2024系燒結Al合金について実験と検討を行った。 得られた主たる結果は次の通りである; (1)Fe燒結体に関して曲げ振動法により共振振動スペクトルを測定したところ,第1次から3次までの3本の振動スペクトラムが観測された。これら共振振動数と焼結体密度との間には直線関係があり,第3次共振振動に関する直線の勾配が最も大きくなった。 (2)第1次〜3次までの共振周波数を用いてFe焼結体の見掛けの弾性率を求めたところ,従来報告されている結果とは異なり,低くなる傾向を示した。 (3)2024系燒結Al合金の時効処理によって、硬度は時効にともない上昇し、ピークを示す。また、時効初期に内部摩擦の上昇が認められるが、その後、ほぼ一定になる。この原因はGP(1)ゾーンによって、内部摩擦が上昇したものと予想されるが、その機構は現段階では明らかでない。 (4)本実験により測定された弾性率は動的なものと考えられ、硬度とは、無関係にほぼ一定であるが、一般に報告されている静的弾性率(75GPa)よりも低い値となった。この原因については,本実験で採用した弾性率評価法を弾性論から考察する必要があると思われる。
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