研究概要 |
残留農薬測定のための簡便性、迅速性、かつ経済性を備えた新しい測定法として免疫化学測定法の開発を試みた。 開発の対象農薬としてカ-バメート系殺虫剤であるアルジカルブおよびメソミルの2薬剤を選び、それぞれについてポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の作製を行った。両農薬のハプテンとタンパク質の複合体を作製し、これを抗原としてウサギに免疫した。得られた3種類の抗血清からのポリクローナル抗体は、農薬標準品に対して親和性を示し、酵素免疫法(ELISA)で検出濃度を求めたところ、アルジカルブでは、10〜10,000ng/ml、メソミルでは20〜10,000ng/mlであった。モノクローナル抗体については、マウスを免疫して摘出した脾臓細胞をミエローマ細胞と融合し、得られたハイブリドーマのクローニングを行い、5種類の抗体産生細胞が得られた。その検出濃度はアルジカルブでは、10〜1,000ng/ml、メソミルでは10〜500ng/mlであった。 両農薬と構造類似の化合物との交差反応性を調べたところ、モノクローナル抗体で、これらの化合物と反応しない特異性の高い抗アルジカルブ抗体と抗メソミル抗体が得られた。 さらに、これらの抗体を用いて環境試料や作物中に残留する農薬が測定できる可能性を検討するために、水道水、土壌及び農作物に添加した農薬標準品の測定を行ったところ、90%以上の回収率が得られたので実用の可能性があると考えられる。
|