研究概要 |
HKR1のc末端側にあるBamH1部位にLEU2遺伝子を挿入し、細胞膜貫通領域を破壊して得られた変異株の細胞壁β1, 3-グルカン量及びβ1, 3-グルカン合成酵素活性を測定した。さらに、細胞をカルコフラワーで処理し、蛍光顕微鏡下で細胞の出芽時の形態変化を観察した。またHKR1産物の抗体を作成し、蛍光抗体法によりHKR1タンパクの局在性につき検討した。 (1)これまでの結果よりHKR1をGAL promotorを使って過剰発現するとβ-1, 3-グルカンの含量が増えることから、HKR1はβ-1, 3-グルカンの合成に関与していると考えられた。今回はβ-1, 3-グルカン合成酵素の活性を野性株とHKR1部分変異株で比較した。その結果変異株では野性株に比較して酵素活性が3分の1に低下していた。一方、キチン合成酵素の活性は、両者で違いはなかった。 (2)細胞壁骨格β-グルカンの含量も、HKR1の部分破壊により減少した。 (3)出芽形成におよぼすHKR1の部分破壊の影響を、カルコフラワーを用いて出芽部のキチンを染色して蛍光顕微鏡にて観察した結果、野性株の出芽様式が極性を持ったaxial buddingを示すのに対し、変異株は無極性のランダムなbudding patternを示した。 (4)抗HKR1タンパク質抗体を用いて、HKR1タンパク質の細胞内局在性を調べた。その結果細胞表面に強い蛍光が認められ、細胞内には蛍光がないことからHKR1タンパク質は細胞表層に局在している事が示された。 以上の結果より、HKR1は酵母細胞壁骨格βグルカンの生合成を制御すると同時に出芽部位の選択に関与している遺伝子である事が明らかとなった。
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