農薬の使用を最小限に抑えた、より安全性の高い農産物増産のために、植物本来が具備している潜在的な罹病抵抗反応を利用する新しい防御手段の開発が望まれている。植物は、進化の過程で病原菌に対する様々な物理的あるいは化学的防御システムを構築して生存してきている。この抵抗反応に関与する物質群の解明により、その機能を最大限に誘因させ、かつ新しい防御機能を備えた植物を創製することが可能となる。また、病原抵抗性発現の新しい引き金物質(エリシター)の開発は、二次代謝活性化因子として培養細胞などを用いた有用物質生産の面からも注目されている。 そこで、生体高分子化合物を素材にいて、それらの持つ潜在的植物活性化能を精査した。当初計画した、中性多糖であるラミナランを酵素分解して得られた画分からエリシター活性をもつオリゴ糖を純粋に調整する事ができ、その化学構造式を決定して、J.of Carbohydr.に投稿し公表される運びとなった。また、甲殻類の外套構造をなすキチンから、キトサンを調製し化学修飾して、新たに植物の二次代謝を著しく活性化するオリゴ糖を得ることに成功した。現在、それらの活性発現の種特異性について検討しており、次年度も継続してこの問題に取り組む。
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