レジオネラ属細菌が細胞内増殖中に新しく産生するタンパク質遺伝子のクローニング

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06670312
• 研究機関: 産業医科大学
• 研究代表者: 吉田 真一 産業医科大学, 医学部, 教授 (60128113)
• 研究分担者: 宮本 比呂志 産業医科大学, 医学部, 助手 (40229894)
• キーワード: レジオネラ / 細胞内寄生性細菌 / マクロファージ / クローニング

研究概要

ヒトに劇症肺炎をひきおこすL. dumoffiiが他のレジオネラ属菌に比べ、Vero細胞への感染率が約4〜20倍高く、細胞内増殖も約10〜100倍速いことを見い出した(第48回日本細菌学会九州支部総会、発表)。そこで、これらの役割を担うL. dumoffiiの菌体タンパク質を同定するため、Vero細胞内で増殖中のL. dumoffiiの菌体タンパク質プロフィールを調べたが、Vero細胞内でのみ特異的に発現量の増加しているタンパク質はなく、恒常的に本菌が発現しているタンパク質がこれらの機能を持っていることが推測された。しかし、L. dumoffiiがL. pneumophila SGIと異なり、積極的にVero細胞内に侵入している可能性が示唆されたため、L. dumoffiiのVero細胞内侵入の機序とその後の増殖様式について生化学的、形態学的に調べた。その結果、L. dumoffiiのVero細胞内侵入にはmannose receptorやmicrofilament-dependent phagocytosisが関与しておらず、また、本菌のVero細胞内侵入はN-acetylglucosamineにより阻害されることが明らかになった。電顕による観察では、L. pneumophila SGIがエンドソーム内で増殖しているのに対し、L. dumoffiiは、感染早期にエンドソームからエスケープして細胞質内で増殖しており、L. pneumophila SGIとは異なった増殖様式をとっていた。
また、L. pneumophilaのマウスマクロファージ内増殖を支配し、マウスの13番染色体上に位置するLgnl遺伝子は、L. dumoffiiのマウスマクロファージ内増殖を支配せず(Infection and Immunity 64(5), in press, 1996)、マクロファージ内での増殖様式もVero細胞内での増殖と同様にL. dumoffiiとL. pneumophilaで異なっていることをあきらかにした。
L. dumoffii、 Vero細胞、およびマウスマクロファージを使用した本年度の研究により、レジオネラ属細菌の細胞内増殖様式の多様性を示すことができた。

研究成果

• [文献書誌] 吉田真一 ら: "レジオネラ属菌の比較生物学-宿主との相互関係を中心として-" 日本細菌学雑誌. 50. 745-764 (1995)
• [文献書誌] Miyamoto, H. et al.: "Temperature effects on Legionella pneumophila killing by and multiplication in phagocytes of guinea pigs" Microbiology and Immunology. 39. 647-654 (1995)
• [文献書誌] Beckers, M. C. et al.: "Natural resistance to infection with Legionella pneumophila: chromosomal localization of the Lgn1 susceptibility gene" Mammalian Genome. 6. 540-545 (1995)
• [文献書誌] Fujio, H. et al.: "Decreased capacity of aged mice to produce interferon-gammain Legionella pneumophila infection" Mechanisms of Ageing and Development. 81. 97-106 (1995)
• [文献書誌] Matsuzaki, M. et al.: "Intracellular multiplication of Legionella pneumophila in HL-60 cells functionally differentiated in response to 22-oxacalcitriol" Journal of Leukocyte Biology. 57. 574-580 (1995)
• [文献書誌] 藤井潤 ら: "レジオネラ感染症の基礎と対策-特に作業環境管理の立場から-" 産業医科大学雑誌. 18. 61-76 (1996)
• [文献書誌] Miyamoto, H. et al.: "Spectrum of Legionella species whose intracellular multiplication in murine macrophages is genetically controlled by Lgn1" Infection and Immunity. 64(in press). (1996)