慢性アルコール性膵炎の臨床的特徴として、膵形態像(膵管造影像)、膵外分泌機能、膵内分泌機能、病理組織像の間にはそれぞれ乖離があることはよく知られているが、その機序は不明である。そこで、アルコール投与(2.0g/kg/day)に膵管狭窄を加えた群の3カ月モデル(以下CAPモデル)を作製し、膵管造影、病理組織像、および膵機能について検討し以下の結果を得た。 1.肉眼的にはCAP3ケ月モデルにおいては膵の高硬度は増強していた。膵管造影像所見でも主膵管の拡張、蛇行が認められた。セクレチン負荷試験による膵外分泌機能では膵液量、アミラーゼ量、重炭酸塩量とも対照群に比較して低下していた。膵内分泌機能は差は認められなかった。病理組織学的所見ではヒト慢性アルコール性膵炎の組織像に類似した所見が得られた。 2.水素ガスクリアランス法による膵の組織血流量の測定ではCAP3カ月モデルにおいて対照群より有意の低下が認められた。 3.CAP3カ月モデルの一部においては肉眼的、レ線にて膵石が慢性アルコール性膵炎モデルとしては世界で初めて確認された。 以上の結果より、膵管狭窄はアルコールの障害を増強すること、慢性膵炎においては膵の組織血流が低下していること、および本モデルにおいて膵石症が作製できることが確認できた。これらのことは慢性アルコール性膵炎の発生機序を解明する上で極めて有意義である。
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