研究概要 |
我々はこれまでに異なった内面構造(平滑膜またはミクロ多孔質)と異なった漏水率(0,2.7,11,39ml/min/cm^2)のミクロ多孔質の管壁をもつポリウレタン製小口径人工血管を作製した。そして長さ1.5-2cmのこれらの人工血管をラットの腹部大動脈に植え込み、3カ月間まで評価した。そして、満足すべき開存性を得るためには、漏水率が約11ml/min/cm^2以上であること。そして、良好な開存性かつ高度な内皮化を達成するためには(1)漏水率が約39ml/min/cm^2ないしはそれ以上であること、あるいは(2)漏水率が約39ml/min/cm^2ないしはそれ以上であり、かつ内面構造がミクロ多孔質であることが望ましいことが示唆された(1994年、日本胸部外科学会総会および1995年、The 5th International Symposium on Artificial Heart & Assist Devices発表)。 次に、この結果に基づき、漏水性をもつモクロ多孔質ポリウレタン製小口径人工血管(内径1.5mm、長さ10cm、146ml/min/cm^2)を作製した。至適漏水率を追究するため、試みに漏水率はこれまで試験された人工血管のなかでは最も大きかった39ml/min/cm^2よりもさらに大きな146ml/min/cm^2とした。そして、このグラフトをループ状にしてラットの腹部大動脈に植え込むという厳しい評価モデルを採用し実験を行い、約7カ月目の生存ラット(n=3)を得た。このうち1匹のラットを76日目と133日目に開腹してグラフトの開存を確認した。 引き続き一年以上の長期植え込みを行い、開存性、安全性、そして内皮化の状態を評価する予定とした。結果が良ければ、そのグラフトを犬などのcoronary positionに植え込み、評価する実験に移行する予定である。
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