研究概要 |
内面構造と漏水性がA-Cバイパス用小口径人工血管の開存性と内皮細胞被覆に及ぼす影響を検討した。異なった内面構造(平滑膜、散在性小孔を伴った平滑膜、ミクロ多孔質)と異なった漏水率(0,2.7,11,37,39,58ml/min/cm^2)のミクロ多孔質の管壁をもつ6種類のポリウレタン製人工血管(内径1.5mm,長さ1.5-2cm)をラットの腹部大動脈に直線状に端々吻合で植え込み、術後3カ月間まで評価した。その結果、0または2.7ml/min/cm^2という小さな漏水率をもつ人工血管は内面構造にかかわらず、早期に血栓性閉塞した。漏水率が11ml/min/cm^2で内面構造が散在性小孔を伴った平滑膜である人工血管は開存性は良好であったが、内皮細胞被覆はほとんど認められなかった。しかし、漏水率が37あるいは58ml/min/cm^2で内面構造が散在性小孔を伴った平滑膜である人工血管は開存性は良好であり、かつ内皮細胞被覆は全内面の約半分以上に認められたが、内面全体に認められたものはなかった。一方、漏水率が39ml/min/cm^2であり、かつ内面構造がミクロ多孔質である人工血管は良好な開存性とほぼ完全な内皮細胞被覆が得られた。すなわち、満足すべき開存性を得るためには、漏水率が約11ml/min/cm^2以上であること。そして、良好な開存性かつ高度な内皮細胞被覆を達成するために漏水率が約約11から39ml/min/cm^2ないしはそれ以上であり、かつ内面構造がミクロ多孔質であることが望ましいことが示唆された。さらに高度に達成された内皮細胞被覆が慢性期において、そのまま維持されていくのか否か評価する人工血管植え込み実験を行った。すなわち、ミクロ多孔質の管壁構造を持ち、かつ漏水性を備えた内径1.5mm、長さ10cmのポリウレタン製小口径人工血管をラットの腹部大動脈に植え込むという厳しい条件で評価した。その結果、232日というの長期間にわたり開存が得られることが判明した。このラットはさらに長期間の継続飼育観察下にある。以上述べたとおり、ミクロ多孔質構造を小口径人工血管の設計概念に導入することの妥当性が示唆された。
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