研究概要 |
我々は、腎尿細管細胞の増殖における細胞間コミュニケーションの意義について研究を行った。イヌ遠位尿細管細胞由来のMDCK細胞株を使用し、そのGap結合の存在をScrape Loading法にて確認した。次いで腎細胞眼の発癌プロモーターであるDMN(dimethylnitorosamine),KBrO_3,FeSO_4・7H_2O、でMDCK細胞を処理し、Gap junction assayを行ったところ、時間の経過とともにMDCK細胞のGap結合は消失した。またヒト腎癌細胞株であるACHNおよびNT細胞株では、ギャップ結合は認められなかった(第83回日本泌尿器科学会)。さらにギャップ結合の局在の変化をみるため、Gap結合の責任蛋白の1つであるコネキシン43に対する抗体を用いて免疫染色を行った。無処理のMDCK細胞は細胞膜周囲に一致し染色されたが、ACHN,NT細胞は細胞膜にはほとんど染色をみとめず細胞室に陽性をみとめた(第13回国際腎臓病学会)。また、各種増殖因子のMDCK細胞における細胞間コミュニケーションに及ぼす影響について検討した。増殖に陽性に働くEGF、b-FGFでGap結合の消失をみたが、TGF-β,a-FGFでは変化を認めなかった(第38回日本腎臓学会)。 以上より、正常の腎尿細管細胞はGap結合を保ち、秩序ある構築をつくっているが、癌化や、発癌プロモータ、増殖に関与するGrowth Factorにより消失もしくは低下すると思われる。 さらにヒトの腎細胞癌組織とその周囲正常部組織を電子顕微鏡下Freeze Fracter法により解析し細胞表面のGap結合を観察した。すると明らかに正常部に比べ癌部で減少していた。一方、コネキシン43m-RNAの発現は癌部の方が正常部より増加していた(第54回日本癌学会)。腎癌細胞でのギャップ結合の消失と遺伝子発現の増加はコネキシン43以外のギャップ結合に関与する遺伝子について、及びコネキシン43蛋白の細胞における局在についてさらに検討する。
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