研究概要 |
我々は、イヌ由来の遠位尿細管細胞であるMDCK細胞株を用いて、そのGap結合の存在をScrape Loading法で確認後、腎細胞癌の発癌プロモーターであるDMN(dimethylnitrosamine)KBrO_3,FeSO_4・7H_2OでMDCK細胞を処理すると時間の経過とともにGap結合は消失していたことがわかった。Gap結合の責任蛋白の1つであるコネキシン(C_X)43の免疫染色を行った。無処理のMDCK細胞はCx43は細胞膜に染色されたが、発癌プロモーター処理細胞は、その局在が細胞質へ変化し、しかも減少していた。一方ヒト腎癌の細胞株であるACHN,NT細胞株では、Gap結合はみとめられず、ACHN細胞は、Cx43mRNAの発現はみとめるが、NT細胞は明らかではなかった。次にヒト腎癌組織とその周囲正常部組織を用い、電子顕微鏡下でFreeze fracture法で、Gap結合の形態を観察した。low Gradeの癌部にわずかに小さなGap結合をみとめるもののその他の癌部にはみとめられず、一方正常部では、全例に大きなGap結合を数多く確認した。同時に細胞間結合の1つであるタイト結合を解析したが両群間で変化はみられなかった。以上より腎尿細管細胞の癌化の過程でGapの消失および変化が関与していることが推察された。
|