研究概要 |
〈緒言〉本研究の対象としたものは、以下の3種類の環境汚染物質である。1.使用中止後20年を経ていまだにヒト体内での残留が問題となっているBHC(1,2,3,4,5,6-hexachrolocyclohexane)。2.近年、白蟻駆虫薬として消費が伸びているため使用者の中毒が問題となっているクロルピリホス。3.大気汚染の原因の一つとして注目されているデイ-ゼル車の排気煤煙。 〈方法〉健康なボランテイアより得た射出精液を液化後、パーコール法で洗浄精子を作成し、この洗浄精子を薬物(最終濃度500ng/ml〜500ug/ml)、または排気ガスより抽出した物質を含むHANKS培養液で培養し、精子運動能(運動率、運動速度、直進運動性)を精子自動分析装置(Cell Soft 3000)を用いて分析した。同時に生体染色法を用いて精子生存率の測定も行った。 〈結果および結論〉BHCとクロルピリホスでは、観察した全ての濃度で精子運動率の抑制が認められた。特に、500ug/mlでは両薬物投与群ともにほぼ完全に精子運動が停止し同時に精子生存率も数%程度にまで低下し、強い毒性を示した。50ug/mlでも同様に運動率の抑制と同時に精子運動速度、直進運動性および精子生存率の低下が観察された。また、デイ-ゼル車の排気ガス抽出物でも精子運動の抑制が認められた。今後、さらにこれらの環境汚染物質の精子機能に及ぼす影響の詳細について検討を加えると同時に、精漿中の当該薬物濃度の測定を行う予定である。
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