研究概要 |
(1)ヒト卵管上皮細胞培養と癌遺伝子導入を試みているものの,ヒト上皮細胞の不死化は困難であり,いまのところ株化には成功していない.ヒト卵管細胞は,婦人科良性腫瘍の患者から同意のもと採取するため,検体量が限定され実験回数も限られる.そこで,マウス卵管および子宮上皮細胞の株化を検討中である.マウス子宮内膜細胞は,過排卵処理後の妊娠初期マウス子宮をトリプシン処理することにより細胞を回収する.培養液はDMEM+10%FCSを用いて2〜3回の継代培養が可能である.マウス卵管上皮細胞は子宮内膜と同様の方法を用いて採取可能であるが,得られる細胞数が少なく,現在採取法を改良中である. (2)我々は種々の増殖因子が着床前初期胚に及ぼす効果を検討した結果,basic fibroblast growth factor(bFGF)がマウス着床前初期のRNAおよび蛋白合成を促進作用を有することを初めて明らかにした.また,マウス胚盤胞および子宮内膜細胞から全RNAを採取しReverse transcriptionpolymerase chain reaction(RT-PCR)を用いて初期胚と子宮内膜細胞におけるbFGFおよびFGF受容体1遺伝子の発現を検討した.その結果,マウス初期胚自身はbFGFを発現していないが,FGF受容体1遺伝子を発現し,子宮内膜はbFGF遺伝子を発現していることを見いだした.さらに,マウス卵管および子宮組織においてbFGF蛋白の発現を免疫組織染色によって明らかにした.これらの結果は,受精卵の発育の場である卵管および子宮で,bFGFが初期胚発生に関与することを強く示唆するものである.
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