研究概要 |
シアリルルイスA抗原と血管内皮細胞(HUVEC)上のE-セレクチンとの相互作用について検討した。ヒト癌患者腹水よりシアリルルイスA抗原を持つケチン型糖タンパク質(SL-GP)を精製した。SL-GPはIL-1で誘導したHUVECに結合し、その結合はMSW113(抗シアリルルイスA抗体)や抗E-セレクチン抗体で阻害された。IL-1で処理したHUVECをSL-GP存在下又は非存在下で^<35>S-Met, Cysで標識した。細胞及び培養上清より免疫沈降により、E-セレクチンを調製し、SDS-PAGE後フルオログラフィーにより解析した。SL-GPの有無に拘わらず、細胞より得たE-セレクチンに変化は見られなかったが、培養上清より得たE-セレクチンはSL-GP存在下の方が著しく減少していた。また、パルスラベル後SL-GPの存在下又は非存在下でチェイスしたときの細胞内のE-セレクチンの挙動を比較した。SL-GP存在下の場合E-セレクチンが著しく分解され、E-セレクチンがリガンドとともに細胞内に取り込まれ分解を受けることがわかった。次に、細胞をSL-GPの存在下又は非存在下で培養後、新しい培養液中で標識したところ、SL-GP存在下の方がE-セレクチンの合成量が増すことがわかった。このような現象が血中にシアリルルイスA抗原を持つ癌患者で起こっていることが予想される。血中に存在するシアリルルイスA抗原が結果的にHUVEC上のE-セレクチンの発現を持続させることになり癌細胞の血行転移に有利に働いているものと考えられる。
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