研究概要 |
周波数50Hzで、極低周波変動磁場(ELF)の磁場密度0から400mTまでの可変の条件で、まず、基本的指標である細胞増殖と致死について長時間曝露によるELFの影響を調べた結果、ELFの長時間曝露においては細胞増殖や致死について有意な影響は認められなかった。ELF曝露によるc-fos,c-mycやc-junの初期応答遺伝子の発現誘導について検討した結果、転写レベルにおいては400mTでc-fosとc-mycにおいてえわずかに誘導が観察されたが、有意差があるかどうかについてはさらに検討を加える必要があると考えられる。c-junについてはELFの影響はほとんど認められなかった。また、これまで明かにされた遺伝子発現誘導物質(血清、TPA、各種成長因子など)による遺伝子発現誘導とELF曝露による遺伝子発現の違いの有無について動態解析した結果、ELFの遺伝子発現誘導は、c-fosに関する限り、血清やTPAによる発現の誘導に比較して、わずかな程度であった。当初期待された初期応答遺伝子(c-fos,c-myc,c-junなど)の高密度ELFによる転写レベルでの遺伝子発現が、他の増殖因子のそれより、あまり大きな有意性のある結果として得られなかった。すでに、国外において報告されている遺伝子発現に関する結果との違いについては、実験材料やELFの周波数、密度の違いで説明できるかどうか検討する必要があるように考えられる。
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