研究概要 |
思春期後期における女子について顎顔面各部の計測を行い,その変化量を求めた.顎骨や身長の変化様相と,血中骨形成マーカーや成長関連因子である成長ホルモン(GH),insulin-like growth factor I(IGF-I),オステオカルシン(OC),procollagen-III-peptide(PIIIP)および尿中骨吸収マーカーであるピリジノリン(Pyr),デオキシピリジノリン(Dpyr)濃度との関係について検討した. 結果は以下の通りであった. 1.思春期後期におけるGH,IGF-I,OC,PIIIP,Pyr,Dyprの分泌動態には,Class III群とClass I群の間で明らかな差は認められなかった. 2.身長の増加ピークとPyr,Dyprの最高値を示した1〜2年後に骨塩量Σ GS/D増加のピークが発現し,17歳頃にいずれも増加が停止または最小値を示すことがわかった. 3.OC,PIIIP,Pyr,Dyprは,Class III群およびClass I群ともに下顎骨の成長量との間で有意な相関が認められた. 以上の結果より,下顎前突者における血中および尿中骨代謝マーカーの分泌動態は,顔面骨格型に調和のとれた者のそれと相違がないと考えられた.また,血中OC,PIIIP,尿中Pyr,Dpyr各測定値は思春期後期における個体の下顎骨成長速度と高い相関を有していた. 骨成熟をよく反映している骨代謝マーカーは,手骨X線写真を用いた成熟度評価のように放射線被曝のない利点を有していることから,今後顎骨成長の予測の有用な指標になり得るものと期待される.
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