アルツハイマー病などの変性疾患で、ニューロン死と共に成長抑制因子(GIF)が消失する。GIFには、神経栄養因子活性を抑制する作用だけでなく、フリーラジカル消去能もあることがわかっている。そこで、GIFの消失が、フリーラジカルを介して、ニューロン死を加速するかどうかを明かにするため、以下の研究計画を実施した。 1.GIFが酸素ストレスからニューロンを保護するかどうかを調べた。培地に添加したGIFは50%酸素負荷によるニューロン死から培養ラット大脳皮質ニューロンを保護した。 2.GIFはprotease類に抵抗性があるため、培養アストロサイト(ラット)にGIFのantisense oligonucleotideを導入してGIF mRNA発現を抑えても、培養アストロサイト内に存在するGIFがすぐに消失する保証はない。そこで、GIFの消失を証明するために、sandwich ELISAを開発した。ヒトGIFを抗原に、ラットGIFも認識する単クローン抗体を作製し、第一抗体とした。次に、ラットGIFのN末端の8-12残基に相当する合成ペプチド3種類、C末端の9-11残基に相当する合成ペプチド2種類に対する抗体を作製したが、C末端11残基ペプチドに対する抗体のみがsandwich ELISAの第二抗体として使用できた。この二種類のGIF抗体を用いて、sandwich ELISAを確立した。 3.現在、培養アストロサイトにGIFのantisense oligonucleotideを導入し、GIF mRNA発現を抑えて、GIF蛋白を消失させる条件を検討しており、今後、GIF発現を抑えたアストロサイトと胎生大脳皮質ニューロンとをcocultureし、50%酸素負荷によるニューロン死が加速されるかどうか調べる予定である。
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