研究概要 |
水の酸化分解に対してマンガンポルフィリン二量体は優れた触媒作用を有する世界初のマンガン錯体触媒である。そこでその機能の一層の展開を図るためにフッ素化体を合成し、高原子価状態の同定、安定性の評価、並びに構造決定に向けての検討を行った。 フッ素化ポルフィリンは既知法を部分的に改変して合成した。常法によりマンガン誘導体とした後、過酸酸化を行うと対応する高原子価体が得られた。一般に、マンガン(V)ポルフィリンは極めて安定性が悪く、室温では速やかにMn^<III>へと分解することが知られているが、本ポルフィリンは室温でも数時間以上変化することなく高原子価状態を保つことが明らかとなった。その生成物は、^1H NMR,^<19>F NMR,共鳴ラマンおよび紫外可視吸収スペクトルにより、低スピンd^2 Mn^V=0種と同定した。非フッ素化体と比較すると、フッ素化体のMn=0伸縮振動はかなり大きく、Mn-0結合の結合次数が二重結合より大きくなっていることを示した。その半減期は室温では長く数時間以上、-30℃では数日以上分解が認められなかった。これを利用して結晶構造解析を行うべく、その条件の最適化を進めた。 一方、本研究と並行して二量体合成を行った。従来法と同様の経路で、かつ合理的な収率で合成が出来た。本ポルフィリンはサイクリックボルタンメトリー法による測定において、電位掃引を繰り返しても明瞭な再現性のある電位電流曲線を与える事から、高酸化状態を経由してもポルフィリンの分解等が起こらないものと結論づけた。
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