研究概要 |
本年度は 1)学習評価が学習者に与える影響に関する実証的検討 2)実際の学校場面における学習評価の機能に関する探索的検討,3)学習評価の背後にある認知過程に関する基礎的検討,の3つの研究を行った.1)に関しては,学習評価が学習者に影響を与える際に,"テスト形式スキーマ"という,テストそのものに対する学習者の素朴な信念が関与していることを明らかにした.その上で,こうした学習者の素朴な信念を考慮しながら,学習評価を実施することを"インフォームドアセスメント"と名づけ,その重要性を主張した.2)に関しては,東京大学附属中等教育学校でのフィールドワークのデータをもとに,特に総合学習において,学習評価がどのような機能を持っているかに関する探索的な検討を行った.その結果,総合学習の評価では,特に学習者の主体的な能動性や,情報収集・探索能力のような要因が,学習評価との相関が高いことが明らかになった。そして,学習者は総合学習で得られた評定に関して,長期的な記憶を有し,その影響力が非常に大きいことが見出された.3)に関して,先行研究では再認形式のテストに回答する際に,学習者が熟知性と想起という2種類の質的に異なる認知的プロセスに依拠していることが分かっていた.研究代表者はその理論の問題点を指摘し,その問題点を別の観点から捉えるための枠組みを提唱した.
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