研究概要 |
本研究の目的は、アフリカのいわゆる「伝統医療」を手ががりとし、さまざまな民族が混住し、メディアの発達,人の移動も活発な現代のアフリカ地域社会において民俗知識がどのように翻訳され継承されているのか、またそれらは当該地域の社会的・文化的背景の中で翻訳者がどのように意図的、あるいは非意図的に変容され得るものか、その過程を記述・分析することにより、現代アフリカにおける「伝統医療」の実態を明らかにするとともに、民俗知識の変化、ひいては文化変化を動態的にとらえ得る理論モデルを構築することにある。 平成18年度前半は,カメルーン共和国南部におけるフィールドワークを行ない,治療儀礼およびそこで歌われる歌,薬草の採集等,一次資料の収集に努めた.またカメルーン共和国およびフランスにおいて文献資料の収集にも努めた. 後半は,集めた一次資料の整理,分析を行ない,また文献資料から先行研究の批判的検討,およびメディア論をはじめとした他分野の研究の成果を積極的に取り込みなどから,新たなる視座の検討を行なってきた.これらの成果として,平成19年1月にはカメルーン南部の治療儀礼についての発表を行ない,カメルーン,フランス,ベルギーの研究者との意見交換を行なった.また,しばしば「伝統医療」と密接な関係にある妖術現象について,カメルーンで行なわれたコロキアムをもとにした論文集を題材として,妖術現象が研究者によって構築されていく危険性を指摘した論文を現在,投稿中である.
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