1.京都議定書により一部の先進国は二酸化炭素の削減を行うことになったが、削減に成功している国は少ない。しかし、英国は、2002年には90年比でGDPを30.8%増加させていながら90年比6.6%の二酸化炭素を削減している。英国が90年代に二酸化炭素の削減に成功した要因をIEAのレポート・データなどを参考に明らかにした。英国の二酸化炭素排出量の削減には、硫黄酸化物と窒素酸化物の排出規制とエネルギー市場(天然ガス市場と発電市場)の自由化政策と、エネルギー事業(石炭、天然ガス、電力)の民営化によって、発電部門の燃料が石炭から天然ガスへと転換したことが大きく寄与している。90年代の英国のエネルギー市場の自由化とエネルギー事業の民営化は、サッチャー政権の新自由主義の経済政策として、公共事業・サービスを見直すために講じられた政策であった。しかし、本政策は、発電部門の燃料転換を進め、英国に二酸化炭素排出量の削減という副次的便益をもたらした。 2.京都議定書に批准した附属書B締約国の一部は、経済活動の低迷などの理由により二酸化炭素排出量が減少し、京都議定書の目標排出枠に達成余剰分(以下、「ホットエア」)が存在する。特に、ロシア、ウクライナを含む旧ソ連は大量のホットエアを所有しているので、旧ソ連がホットエアを国際排出権取引市場で独占的に供給し、利益を得ようとすることが予測されている。また、日本は国際排出権市場での排出権の獲得以外に、中国とクリーン開発メカニズム(CDM)を行って二酸化炭素の削減コストを低減させようとする可能性がある。そこで、静学的応用一般均衡モデルを構築し、旧ソ連の排出権独占的供給と日本・中国間のCDMのシミュレーションを行った。日本は、排出権取引以外に中国とCDMを行うことで削減費用を減少することが可能だが、その大きさはそれほど大きくない。
|