本年度行った研究は、以下の通りである。 1.微分型静電分級器(DMA)の開発を行った 2.開発した装置を使用した観測を中国北京市で行った 3.エアロゾル質量分級器を用いた、CCNカウンタの新たな校正法を確立した 1.においては、本研究にとって必要不可欠なDMAの開発を行った。市販品のDMAも存在するが、それらは非常に高価である。従ってDMAが3-4台必要となる本研究を遂行するためには、安価に自作することが求められる。結果として、市販品以上の性能を持つDMAが1/4程度の費用で開発された。 2.については、エアロゾル雲凝結核能粒径分布の測定を中国北京市郊外に位置するYufa-Huang pu Universityにおいて行った。 3.では、エアロゾル雲凝結核能の研究に不可欠なCCNカウンタの新たな校正法を考案した。従来の方法では、DMAにより粒径選別を行った硫酸アンモニウム粒子の雲凝結核能を測定することにより、CCNカウンタ内の過飽和度を推定していた。この方法では硫酸アンモニウム粒子が持つ熱力学的性質を記述するモデルの不確定性が、推定値に大きな差をもたらすことが近年明らかになってきた。従って最近の研究では二重確認のため、硫酸アンモニウム粒子のほかに熱力学的特性がよく知られた塩化ナトリウム粒子の測定を行う例が増えてきている。しかしながら、その二つの推定値は一致しない。本研究では、その原因がNaCl粒子の非球形性に起因するものであるとの仮説を立てた。そしてその検証を行うために、エアロゾル質量分級器を用いた新たな校正法を考案した。実際に測定を行った結果、硫酸アンモニウムを用いた場合の推定値と塩化ナトリウムを用いた場合の推定値は非常によく一致し、従来に比べてCCNカウンタ内の過飽和度を従来に比べ一桁高い精度で見積もることに成功した。
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