研究概要 |
平成8年度 本年5月,新旧メンバー三木・中生を加え,前年の総括,本年の方向と計画を討論した。 8月末,濱島・沈は中国に入り,復旦大学の協力の下に,上海市青浦県朱家角鎮や江蘇省崑山県周荘鎮・呉江県黎里鎮で城隍廟・金總管廟を視察・聴取を実施,さらに,江蘇省呉江県盛澤鎮で漁民から劉王信仰に関する詳細な聞き取りを実施した。浙江省湖州市南潯鎮で既に別途科研費で河南省の調査を終えた小島と合流,9月初めには,片山・三木も合流し、湖州市長興県に入って,農村での聞き取り調査を開始した。前半は,太湖沿岸部沖積低地に位置する后漾郷,特に霞城村にて,元代から現在に到る「李王」信仰を中心に据え,あわせて解放前の農民の生活について考察した。なお,長興県西部丘陵地帯(軍事上の未開放地帯)の長潮郷にて,沖積低地とは異なる灌漑形態を考察する計画であり,一度は県公安局の「考察許可証」を取得して着手したが,復旦大学側の手続に不備があり,中途で停止を命ぜられ,今年は詳細な調査は出来なかった。今後の予備作業として,湖州市水利局の協力で,西部山地・丘陵地帯の灌漑を視察した。後半は,上海市崇明島に移動,開発・生業及び聚落や社会組織について,老農民からの聞き取りを実施した。 12月,濱島・片山・小島・菊池・沈は広州に入り,広東社会科学院の研究者,および協力者(現地語通訳)の大学院生を帯同,台山市に入った。前半は,昨7年度に調査した海岸山地で客家語地帯である赤渓鎮に入り,数個の村落について,補充調査を実施した。主に,濱島は灌漑(溜池と堰),片山・沈は社会組織,小島は聚落・耕地・水路の立地,菊池は民俗を重点的に考察した。後半は同じく台山市に属するが,丘陵〜扇状地に位置し,広東語圏である四九鎮および斗山鎮で,同様の調査を実施した。 以上,デルタにおける開発・定住・生業・社会結合という課題について,概ね所期の目的を達成し得,学術的に収穫が大きかったと考えられる。
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