研究課題/領域番号 |
07041109
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都文教大学 (1996) 大阪大学 (1995) |
研究代表者 |
河崎 善一郎 大阪大学, 工学部, 助教授 (60126852)
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研究分担者 |
MAZUR V アメリカ商務省, 国立雷嵐研究所, 主任研究員
WILLIAMS E マサチューセッツ工科大学, 教授
舟木 剛 大阪大学, 工学部, 助手 (20263220)
王 道洪 岐阜大学, 工学部, 助手 (20273120)
WANG Daohong Faculty of Engineering, Gifu University Assistant
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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キーワード | 海洋性雷嵐 / 干渉計 / 放電路 / 可視化 / 容量性アンテナ / 電界変化 / リーダ / 帰環雷撃 |
研究概要 |
海洋性雷嵐の総合観測を、日米豪の共同観測として、オーストラリア・ノーザンテリトリ州メルビル島において、平成7年11月11日より12月11日の1ヶ月間実施した。メルビル島は、オーストラリアの最北端に位置し、ダ-ウィン市の北約60キロメートルに浮かぶ小島である。さらに同メルビル島は、気象用語で「熱帯収束帯」と呼ばれている領域に属し、今回設定した共同観測期間中には、春から夏への季節の移り変わりの時期でもあり、活発な雷嵐の活動がしばしば認められている。 共同観測体制としては、アメリカ合衆国コロラド州立大学のドップラーレーダ観測、マサチューセッツ大学のウインドプロファイラ観測、マイクロ波熱放射計観測、オーストラリア気象台の気象レーダ観測、ロケット誘雷実験、九州大学のゾンデによる雲内電荷分布の直接観測等が実施されている。そして大阪大学グループは、UHF波帯干渉計による雲内放電路の観測と広帯域容量性アンテナによる、雷放電に伴う電界変化の測定と実施している。さらに間接的ではあるが、アメリカ合衆国NASAチームが、平成7年4月に打ち上げたOptical Transient Detector 衛星のデータの性能評価を、今回の共同観測結果との比較において実施すべく準備している。 各研究機関で取得したデータは、各々が持ち帰り、現在各機関で解析中であるため、総合観測としての成果は、今後開催されるであろうデータの相互比較・検討のためのワークショップを持たねばならない。また解析が進めば従来の計画通り、インターネットを用いてのデータ交換や郵便等で情報・意見を交換して、熱帯地方における海洋性雷嵐の総合的理解を計って行く予定であるが、現時点では、大阪大学グループの担当した観測結果についての概要を示しその報告とする。 全観測期間1ヶ月の内、11月11日から20日にかけては、干渉計や容量性アンテナの設営及び転正が中心に進められた。また他機関のデータの対応を容易とするため、取得データにはGPS(Global Positioning Satellite)時刻をマーカーとして添付出来るよう配慮した。干渉計と容量性アンテナは各々独立して動作しているため、当初電光を受光後両系の記録部をトリガすべく設計していた。このようにすれば、両データのマイクロ秒精度の時刻対応が可能となるからである。しかしながら実際そのように稼働すると、日中の中距離雷(例えば10〜20キロメートル)に対しては、動作しないことがあり、最終的にはUHF波の急峻かつ比較的振幅の大きな時にトリガするようにした。また干渉計は五素子のアンテナにより構成されており、アンテナ・受信機間のケーブル長は50メートルもあるため、自重及び熱等による伸長が危具され、それらの転正には可能な限りの注意を払った。このような準備の下、本格的な観測は11月20日〜12月6日まで実施し、この間都合6日間の発雷があり、200例に近い放電に伴う電界変化及びUHF波が記録されている。 まず雷活動の様子であるが、海風が支配的である日中特に正午前頃になって島の中央部で積乱雲が発達し、時間の経過と共に北西方向に移動、おおよそ2時間に及ぶ雷活動の後活動を終えるのが標準となっている。この雷雲の直径は時には20キロメートルにも及び現地ではHecterと呼ばれている。雷放電活動は極めて活発で、その最盛期には1分間に50回以上も記録するとの報告もある。今回の大阪大学の観測は、初年度ということもあり全てディジタル方式で、かつ取得データの書き込みのため20秒程度のデータ取得不可能時間があるためこのような統計は得られていない。ところで全取得データの内、その波形から明らかに対地放電であると判断できるものは1割であり、これは従来より知られている活発な雷活動程雲放電の比率が高いと言われている事実と一致している。干渉計による放電路の可視化は、現在典型的な数例について行われており、例えば多重度10を越す放電については、リーダによる放電の進展、ダ-トリーダの進展等興味ある結果が得られている。尚これらの解析結果の一部は、関連学会において公表の予定である。最後にロケット誘雷実験は、その実験場の近くの雷活動が弱く、成功例は得られなかったものの、今後の実験に対しての情報は得られている。
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