BEDO-decylTCNQ錯体を用いて金属的な導電性を有するLB膜を作製し、この膜の物性を詳細に検討した。また、この錯体の水面上の単分子膜について電気伝導度を測定し、膜の構造との関連を明らかにした。 LB膜はアラキン酸(C_<20>のカルボン酸)と1:1に混合し作製した。この膜の電気伝導度は室温から250K付近まで温度の低下とともにわずかながら上昇するが、それ以下の温度ではほぼ活性化型の導電挙動を示し、全体の温度依存性は狭ギャップ半導体の式で良く近似することができた。AFMの測定から、この膜はドメイン構造を有していることが判明している。この場合、電気伝導度の温度依存性はドメイン境界に主として支配される。一方、ドメイン内の電気的性質は熱電能測定およびESR測定から金属的であることが示唆された。 水面上の単分子膜の電気伝導度をアラキン酸との混合比を変化させながら測定した。膜の表面圧-面積曲線の挙動は錯体の混合率が0.56付近で変化した。それに伴い、膜の導電率-面積曲線も大きく変化し、混合比の大きいところでは比較的高い導電率を与えた。これらの結果は、アラキン酸の含有量が低い場合、単分子膜が一種の超単分子膜構造をとると仮定することで良く説明できた。 クラウンエーテルを含む導電性の金属錯体を18-crown-6を中心に系統的に探索した。アルカリ金属としてリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムさらにアンモニウムを用いたが、いずれの場合も導電性の錯体を得ることが出来、X線構造解析を行ったところ、このうち3種については結晶内にイオンチャンネル類似のクラウンエーテルのカラム構造が形成していることが明らかとなった。
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