研究概要 |
人工現実感における人間の感覚統合と三次元空間の認知の機序を情報制御工学,認知心理学,動物行動学,大脳生理学の観点から探求し,臨場感・現実感・存在感との関わりを解明する手がかりを探った。すなわち,人工現実感における人間の感覚統合と3次元空間認知の機序を情報制御工学,認知心理学,神経生理学の観点から探求し,臨場感・現実感・存在感との関わりあいを解明するための手法を確立することを目標として研究を行った。それと同時に,計算機により制御された極めて現実に近いバーチャル空間を人工現実感の手法で生成し,そのなかでの行動を通じて,人間やサルなどの動物の感覚,知覚,認知,行動のメカニズムを,情報制御,認知心理,神経生理など総合的な視点から解明する手段を明らかにすることを目指した。 その結果,臨場感,現実感,存在感の機序を探るためのパラダイムとして,実際と極めて同質の環境でありながら,コンピュータによりそのパラメータが制御しうる人工現実感環境の構築が可能となり,その中での人間やサルなどの動物の行動や生理的指標を観測することにより,それをよりどころとして解明するというパラダイムの有用性を実証することができた。具体的には,実際に視覚と触覚情報を統合し,自分が見たところを自分で触ることができる実験装置を完成させその効果を定量化した。また,臨場感指標をうるための手がかりが視覚誘導のバーチャルな遠心力を観測することにより得られた。大脳生理学の研究では,サルがランダムドットステレオグラムにより立体視可能であるとの証左を得るとともに,道具の使用により感覚受容野が拡大すること等が明らかになった。
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