研究概要 |
脳でホスホリパーゼDは種々の神経伝達物質の刺激により活性化され,ホスファチジルコリンからホスファチジン酸やジアシルグリセロールを生成する情報伝達酵素である.またこの酵素は成長円錐の消退や神経突起の退縮を引き起こすリゾホスファチジン酸生成の初発酵素でもある.この酵素は不飽和脂肪酸で活性化されるタイプと低分子Gタンパク質(ARF, Rho)で活性化されるタイプの2種類に大別される.我々ははじめて不飽和脂肪酸活性化酵素(分子量190K)をブタ肺ミクロソームから精製することに成功したが,本研究はその発展として脳ホスホリパーゼDのcDNAクローニングを行った。酵母(S. cerevisiae, Sch. pombe)のARF活性化型酵素,最近クローニングされたヒトのARF活性化型酵素PLD1,植物(ヒマ)の酵素のコンセンサス配列を用いてPCRを行ないラット脳cDNAライブラリーから新しいcDNAクローンを得た.配列がヒトPLD1の配列と異なるので脳の新しい低分子Gタンパク質活性化型ホスホリパーゼDと思われる.現在までにホスホリパーゼDの活性化に関係すると報告された低分子Gタンパク質はARF, Rho, Ralであるので,得られた配列を大腸菌,動物細胞で発現させ活性化に必要なGタンパク質を同定し,今後この酵素の脳可塑性情報伝達に果たす役割を明らかにしたい.
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