研究課題/領域番号 |
07301054
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇佐美 齊 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50079620)
|
研究分担者 |
松島 征 京都大学, 総合人間学部, 教授 (90031476)
吉田 城 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80127315)
田中 雅一 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (00188335)
富永 茂樹 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (30145213)
大浦 康介 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (60185197)
|
キーワード | 記号 / 意味 / 象徴 / 象徴主義 / 世紀末 / ミメ-シス / 晦渋 / 曖昧 |
研究概要 |
当初の研究計画通り平成9年度は、前年までの研究成果のとりまとめと、原稿執筆および出版準備を行い、すでに研究成果報告書として『象徴主義の光と影』(宇佐美齊編著、ミネルヴァ書房、1997年)を出版した。まず第1章「眼と耳のあゆみ」において、モロ-、ドラクロワ、ゴ-ギャンなどの画家やドビュッシ-などの音楽家との関わりの中で象徴主義文学が再考され、さらに、その後の展望として、フェリーニの映画とサンボリスムの関わりが考察された。第2章「詩の変容」では、ヴェルレ-ヌ、マラルメ、ロ-トレアモン、ルナ-ル、クローデル、パスコリなどを対象に、狭義のサンボリスムの枠を超えた研究がなされ、象徴主義的なものが19世紀から20世紀にかけての文学全般に対してもっていた影響の大きさが浮き彫りにされた。第3章「小説の変貌」には、サンボリスムの影響を小説の中に探るという従来あまりなされなかった諸研究をおさめられている。ルソー、フロベール、ゾラ、ジッド、ヴァレリー、プル-ストなどの小説が、どのようなサンボリスム的側面をもっているかが明らかにされた。第4章「精神時代」としては、サンボリスムと、ファネオンのアナ-キズムや、ハルトマン、ヘルムホルツ、レヴィといった当時の思想家との深い関わりが証明され、さらに、フェノロサの漢字論を通して、サンボリスムの東洋における遠い反響とでもいうべきものが明らかにされた。第5章「手法の転換」は、サンボリスムのもたらした文学的手法の変化を扱うもので、デュジャルダンの「内的独自」、「中心紋」の手法、象徴詩の難解さや解釈をめぐって考察がなされている。本研究は以上の5つの複眼的視点によって、時代、ジャンルなどの狭い制約を超えて、サンボリスムをより広い視野のもとで再考した試みであり、今後はこの成果をふまえて、1910-30年代のアヴァンギャルド芸術運動について考察をすすめていきたい。
|