研究分担者 |
関 哲行 流通経済大学, 経済学部, 教授 (60206620)
山田 雅彦 熊本大学, 文学部, 助教授 (90202382)
斎藤 絅子 明治大学, 文学部, 教授 (90022467)
丹下 栄 下関市立大学, 経済学部, 教授 (10179921)
田北 廣道 九州大学, 経済学部, 助教授 (50117149)
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研究概要 |
本年度は,各分担者の扱う「西欧中世における小経営統合」に関する内外学界での研究動向の的確な把握のため文献・史料(未刊行を含む)の徹底した収集・整理に力を注いだ。また,それと並行して年6回(6,7,8,10,1,2月)研究会を開き,中世初期・盛期・後期「小経営統合」の特質の解明作業を進めた。その際,イスラム市場史,近代ヨーロッパ経済史,及び経済理論における市場問題など隣接領域との対話を図り,時代射程と対象地域を拡大しつつ理論・実証両面から成果の集約を試みた。そこで確認された主要な論点は次の2つに要約される。 1.西欧中世社会,すなわち封建制・キリスト教社会における「小経営統合」の2元的構成の認識。領主制と共同体の枠内で「小経営」を保有・所有する農民・手工業者・商人以外に,それから排除された貧民・病人・巡礼や宗教的マイノリティも含めた諸層の経済・政治・宗教的統合の丹念な追究の必要性。(1)経済統合の場・制度として市場,商業施設,貨幣・信用,外来者法の考察,(2)様々なレベルの政治統合の形態としてギルド・兄弟団,都市,領域国家,王権に代表される領主制・共同体関係の考察,(3)宗教統合の組織として教区・施療院や境界領主の役割の解明,の3側面から実証分析を進めてきた。 2.経済・政治・宗教のいずれか特定要因に還元できない、いわば「社会システム」的な接近の必要。そのための作業として「権力と市場」,社会集団相互間の合意形成の特質を映し出す鏡として「制度」の分析,領主制・共同体あるいは聖・俗両世界の対立を孕みながらも互恵的な相互依存的な「もたれあい」の解明。 なお,この間の研究成果の一部は,本年5月本学で開催される「社会経済史学会第65回大会」の共通論題「市場史の射程」(オ-ガナイザーは研究代表者)において報告される。
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