研究概要 |
種文化の遺伝学的研究を,2つの生殖的隔離機構に大別した. (1)交配前隔離の研究(山元・上野山・仁田坂・小熊) ハワイ産Drosophila25種の体表炭化水素を分析して,種特異的多型と性的2型を検出した.これらは性フェロモンとして機能している可能性がある. D.melanogasterと交配しやすいD.simulans.の♀(S2系統)の交配遺伝子をマッピングしたところ,第2・第3染色体に複数あることがわかった. P因子を転移させたD.melanogaster系統から,D.simulansとの交配率を指標に,配偶行動異常のミュータント(tra-2とfreeze)を得た. D.ananassae近縁種間の求愛歌を分析した.パルス間間隔(ipi)に有為な差は認められなかったが,他の求愛歌成分に種の認識要因が考えられた. (2)交配後隔離の研究(渡邊・布山・松田・山本) D.melanogaster♀×D.simulans♂由来のF_1♀に温度感受性蛹期致死を示す遺伝子を両種のX染色体上に検出した.優性の雑種致死遺伝子をマッピングできる可能がある. D.albomicans×D.nasutaの種間雑種のF_2に,性比が著しく♀に偏る系統があり,その原因は雑種♂の精子形成異常(meiqtic Drive)によるものであり,第2染色体に劣性の,また,Yと第3染色体に優性の因子の存在が考えられた. D.ananassae類のTaxon-Kは多種問との雑種♂に不妊を生じる.その遺伝子は常染色体上にあって,現在,その数と位置を分析中である. D.simulansのpaternal sonless(psl)はX染色体上にあるが,対合するY染色体に感受性(Y^S)があれば,性比は♀に傾く.アフリカの集団中には抵抗性(Y^R)があって,現在分布を拡大中である.
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