研究分担者 |
正田 實 滋賀大学, 教育学部, 教授 (10235715)
小松 彦三郎 東京理科大学, 理学部, 教授 (40011473)
植竹 恒男 亜細亜大学, 教養学部, 教授 (10050189)
澤田 利夫 国立教育研究所, 科学教育センター, センター長 (40000062)
飯高 茂 学習院大学, 理学部, 教授 (20011588)
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研究概要 |
研究の第2年度であり,完結年度でもある今年度においては,世界的な社会の変容ならびに日本が特に直面する危機的状況(生徒の数学"離れ"を含む)を視野におき,さらに,次期教育課程への参考・戦訓を提供する趣旨をこめて、現指導要領の理念・構成の反省,同実践面での検討を行い,次の知見を得た. 1.数学的リテラシーと数学的思考力を2焦点の目標とする理念は,新世紀の数学教育の指導原理であり、時間数の制約が厳しくなる状況下で、教師の資質向上と並ぶ次期指導要領編成の拠り所である. 2.小学校における算数教育は、国語につぐ基幹教科として尊重されるべきであり,また,中学における数学教育は,クラス授業のなかでの個別能力の尊重と学問的発芽をはかるべきである.これに対し,授業時間減少への対策を「全教科一律削減」に求めるかに見える一部当局者の構えには失望せざるを得ない.高校における数学教育は、現指導要領においてすでに選択性の拡大を先取りしている.次期には,さらに生徒の分極化に対処する数学的リテラシーおよび数学的思考力を焦点とする教育を,教師の見識の深化とコンピュータ・グラフ電卓の全面活用により実現すべきである. 3.最近唱道される科学技術振興策は,性急な果実を求める工学振興に流れがちである.新時代における国の知的生命線というべき計算機科学をリ-ドする人材,繁栄を回復に導く科学/技術の進歩をもたらす人材,さらに,知的パラダイム変換のなかで学問の新方法論を構築し得る人材の育成は,科学的思考力の根幹である数学的知性の育成なくしては不可能である. 4.現指導要領に基づく高校数学の教育は,コンピュータ単元の不振を別とすれば,順調に進行し成果をあげている.一方,多くの大学がそれぞれの個別試験からコンピュータ単元を排除していることは認識不足による怠慢であるかもしれないが,その近未来への悪影響は深刻である.早急な改善を求めねばならない.
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