研究概要 |
高度処理の一つとして各地の浄水場で導入されているオゾン処理の副生成物である臭素酸イオンは,動物実験(ラット)での発ガン性やTA100株における変異原性が確認されており,毒性学的にも重要性が高い物質である。 臭素酸イオンは,原水中に臭化物イオンが存在する場合のオゾン処理で生成する最終生成物であり,安定性が高く自己分解が起こりにくい。オゾン処理の後段に設置されている活性炭処理では,新炭では臭素酸イオンが吸着及び還元され減少するが,生物活性炭の状態になっているものではほとんど除去されないことが分かった。 この臭素酸イオンについて,pH,処理時間,オゾン濃度などによる生成特性を把握する実験を行った。この結果,pH,オゾン濃度が高く,処理時間が長いほど臭素酸イオン生成濃度が高くなることが分かった。また,天然有機物質が共存する状態では,臭素酸イオンの生成は有機物質に阻害され,共存有機物濃度とオゾン注入率の比(O3/TOC)に比例して臭素酸イオンが生成することが分かった。有機物の分解は,臭素酸イオンの生成よりも優先して起こるため,実際の浄水処理では,目的物質の分解に必要な最少オゾン注入量となるようにオゾン処理条件を制御すれば,臭素酸イオンの生成を抑制することが可能であると考えられる。 これまで用いられていた塩素処理やその他の代替消毒・酸化剤による副生成物濃度からそれぞれの副生成物による発ガンリスクを算定し,それらの合計値から代替消毒・酸化剤の安定性を評価するという手法について検討を行ったところ,オゾン処理においては臭素酸イオンの影響が大きいことが明らかとなった。
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