ラマン分光装置が納入されたのが、平成7年12月であったが、その後、順調に稼働し、比較的多くのデータが得られた。 本研究では、溶融スラグの動的構造解析が目的であるが、そのための予備データは、十分に得られたと言える。 スラグのモデル物質として、SiO_2-Na_2O系のスラグを用い、Na_2O濃度の違いによって、ラマン散乱のピークがどのように変化するかを調査した。得られた結果は、これまで報告されているピークデータと一致し、装置の精度、測定方法、試料作成方法などの妥当性を確かめることができた。 さらに、新しい知見として、ある特定のピークは、ナトリウム濃度と緊密な関係にあり、濃度とともに振動エネルギーが変化することを明らかにした。これは、Siを中心とした酸素四面体構造の偏角振動と伸縮振動に由来するピークであり、ナトリウム濃度に対してそれぞれ逆の動きをする。これらの関係を利用してラマン分光による定量分析が可能であるものと思われ、ラマン分光の新しい用途を開発することができるものと思われる。 また、ボルツマン分布を仮定して、アンチストークス線を用いることで、測定した物質の温度を計算することが可能であることも確かめられた。今後、高温の溶融試料を用いてラマン測定を行い、計算される温度と計算に用いるピークの種類の関係を明らかにし、温度とスラグ構造変化を調査したい。
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